当医局の特徴を大きく分けると、神奈川県西部随一の「大学病院であるということ」、関連病院と連携しており、大学病院本体としては精神科としての「入院病棟がないということ」、歴史ある児童精神医学・力動的精神医学に基づいた「充実した指導体制」、垣根のない「フランクな医局」が挙げられると思います。
当大学病院は湘南に立地する神奈川県西部随一の拠点病院であり、カバーする地域や人口のかなり大きい病院であります。
神奈川県で唯一ドクターヘリを所有しており、他県や海上などから救急救命科を通じて当科の診療の必要な患者さんが搬送されてくることもあります。症例数が豊富で、専門性が必要とされる症例や他科との協力が必要な症例も多いところが特徴といえます。
大学病院として臨床研究への積極的な参加とともに、大学院の研究チームとして基礎医学的な実験を行ったり、精神医学の理論を構築・提案していくなど、先進的な役割を担っています。
実際にどういうことなのか全くイメージが湧かない方もおられるかと思います。単純に大きなメンタルクリニックとはやや異なります。精神科としての入院病棟は存在しませんが、内科・外科や救急救命科などの身体科で入院しておられる患者さんの精神的なサポートをする業務として、1チームだいたい30〜40人程度を併診として担当し、病棟を回診しています。これらが病棟併診業務となります。
また、他科に通院しながら精神的なサポートが必要な患者さんも外来で担当することとなります。では、保護室が必要であったり、閉鎖の精神科病棟へ入院が必要な患者さんはというと、近隣の関連の精神科病院に入院して頂いています。
実際に現場では、身体的な加療を優先させるべきか、精神的な加療を優先すべきか、個々の状況にあった治療の場がどこか、精神科としてのトリアージを行いつつ、それぞれの目的に合った形での精神的なサポートを行っています。
精神科医療を取り巻く情勢は変化してきています。精神科病棟を減床させ、在宅医療へと向かう精神科医療の方向付けは、今後も続くものと思われます。入院病棟のない当精神科は、地域の関連病院との病病連携を重視しており、病院内では他科とのチーム医療に力を入れています。外来においても、安易に入院加療に頼らない高い臨床力を育成しており、まさに時代のニーズにあった、最先端の研修ができるものと確信しています。
入局してすぐに、一般リエゾン、緩和ケア・サイコオンコロジー、救命救急といった通常の精神科医療と身体疾患をある程度理解した上にそれぞれ専門性を特化した内容の病棟併診業務を行い、高い臨床力や専門性を要求される外来を熟し、研究や精神医学の理論や発展を意識しながら臨床をしていくことに不安を覚えるかもしれません。しかし、入局時に同様の体験をした後に精神科医療の基本となる入院治療について学び、もう一度大学病院に戻って来た上級医とともに診療を行うことによって、より深い理解が得られ先の見通しが立つようになると思います。また、今後出向先で精神科医療の基礎となる入院治療を学ぶ前に敢えてやや専門的な内容に触れておくことで、出向先での入院治療の研鑽も漫然と過ぎ去ることなく、トータルでは早く習熟できると考えております。
入局当初の外来は陪診として上級医について学び、初期の当直は上級医が付き添うなども行っております。スーパービジョン、カンファレンス、勉強会などを通じ普段の疑問や不安を解消していけると考えております。また、ほぼ全員の医局員が学会発表等の経験があり、国際学会での講演や論文の投稿、書籍の依頼原稿などともに、研修医を指導し学会で発表することなども行っており、将来的には指導されるだけでなく、指導できることも必要とされるため、そのような医師の育成に尽力しております。
入院病棟がないため、資格の取得について不安を覚えられる方もおられるかもしれません。しかし、通常1年以上の関連病院への出向勤務があり、殆どの医師が1年で精神保健指定医のレポートを完成させています。むしろ大学病院と関連を持っているために、他では集まり難い症例を紹介することが可能です。また、その指導については大学内の指導医はもちろん、出向先の医師の指導も受けることが出来、かなり手厚い指導を受けられることになります。大学病院以外の現場を知り、他の医局に所属する医師と知り合い、知識や人脈を広げ、また大学病院に還元することで発展していくという点も、出向する大きなメリットです。他にも当大学病院は、日本精神神経学会、日本緩和医療学会の認定研修施設であり、臨床心理士、臨床検査技師の方たちと共に心理検査や脳波検査などを学ぶ機会もあり、他科とのカンファレンスなどを通じ最新の知見を教え合うこともあり、資格も実力も十分に得ることが可能と考えております。
なにより、設立当初から児童精神医学、力動的精神医学を受け継ぎ、それら両方を指導できる上級医が他には類を見ないほど豊富であり、基本が充実しつつマルチディメンショナルな捉え方ができ、本質を理解しエビデンスを構築していける、これから精神医学をリードしていく医師の育成に自信を持っております。
当科は「こころ」を扱っているだけあり、非常に穏やかな雰囲気で楽しく、和気あいあいとした医局です。当医局を構成する医師の約半分は東海大学医学部以外の出身者であり、他病院で研修医時代を過ごした医師や他科を研修した後に入局した医師も多く在籍しています。また、産休・育休や医師自身が体調を崩したとき、海外留学や研究などもフレキシブルに対応し、その後もスムーズに仕事に復帰できるように配慮しています。実際に様々な背景・事情を持った医局員のニーズに対応しており、基本的にやる気のある方はどんな方でも大歓迎です。上下間や出身大学、性別など気にせずフランクに話し合えます。OBの医師も近隣だけでなく様々な場所で活躍しており、幅広い知見を得易いと思われます。何が判らないのかすら解らないといったことも普段から上級医が気にかけてくれるはずです。